古典籍移管中止の請願採択後の方針を問う

◆(相沢光哉委員) 
 所管事項ということで宮城県の図書館の資料移管問題についてお伺いをさせていただきます。
 時間も迫っていますのでなるべく簡略にいたしますけれども、改めて申し上げるまでもなく、既に今移管そのものは中止あるいは停止、凍結というのか、ストップをしているわけであります。教育長は本会議での答弁におきましてこの問題を論点整理をしていきたいということで、一時は有識者会議も開くようなお話もあったわけでありますが、それは何か新年度になってからなのかはっきりしなくなってきておりますけれども、この件は調べれば調べるほど図書館の資料移管問題というよりも図書館の資料移管事件、大変この起こった経過、不透明で不自然な事務手続あるいは教育委員会でこのことが報告も審議もされなかったという経過、そして、特に、だんだん明らかになってきているわけでありますけれども、図書館長が図書館協議会の会長に対してこの問題を協議をすべきだという話が出たときに極めて不適切な暴言を吐いたということを複数の職員が証言をしているわけであります。今日もただ、図書館の館長のポストにあるために、事あるごとにやはり職員に対して威圧的な言動があって、現在の宮城県図書館は極めて不正常な大変息が詰まるような不穏な状態に陥っております。
 これはこういうことをだれが考え、だれがどこでそれを進めようとし、そしてまた、そのことについてどう図ろうとしたのかということはだんだんいぶし出されてきておりますけれども、少なくとも宮城県の図書館が我が国における公共図書館の先駆けとして由緒を持つという名声あるいは評価、機能というものを大変損なってしまったということについて、私は教育委員会、特に教育長の責任というのは十分重いものがあると考えております。
 そこで、こういう状態の中で論点整理をするというふうな対応になるということ自体が、これだけのことがあってあからさまになり、そして、その不当性というものを議会も請願を全員一致で採択をしたというふうなことから態度を明らかにしているように、教育委員会としては、あるいは教育長としてはこの件はまさに誤った考えのもとで進めてしまったという反省と責任をまずしっかりと表明してから、そして、いろいろと論点についての検討をするならいいんだけれども、今言ったように図書館長の暴言というものもそのまま放置している形になっています。
 御承知のように、図書館協議会の会長は、館長から、全く聞くに堪えないおまえ呼ばわりをされながら、文句があるなら教育委員会に言えとか、おまえにつべこべ言われる筋合いはないとか、あるいはおまえの図書館像は古い、考えを改めろとおまえ呼ばわりで罵倒されているわけです。そういう管理職がいるということ自体、本当に県教育委員会、社会教育上も大変な問題だと僕は思います。
 ですから、そういうことに関しての責任の所在も一切ほおかむりしたままこの論点整理と称するという、まずは感覚自体が理解できないんだけれども、改めてその点について現在での教育長の御見解をまずはお伺いしておきたいと思います。
◎(教育長) 
 この移管問題は今経緯を振り返ってみますと、平成21年ぐらいから検討を始めたわけでありますが、その問題意識といたしましてはいずれ図書館の収蔵スペースが手狭になるだろうということがありまして、それにどう対応するかという問題意識の中で、現在の図書館が持っている貴重な資料、これが現状の保管の状態でいいのかということが、もう一つの問題点としてありまして、この貴重な資料の保管の一つの方法として24時間空調がなされている歴史博物館の収蔵スペースに持っていくということが一つの対応策として考えられるというふうな発想から、具体的には平成21年の秋に当時の教育次長をトップとして生涯学習課、それから文化財保護課、そして図書館、そして歴史博物館の職員が集まって検討組織をつくりまして、具体的な対応を協議をして検討を進めまして、平成22年の秋ぐらいまでに基本的な考え方をまとめて、御承知のように図書館で持っている青柳文庫、伊達文庫、養賢堂文庫、そういったものを歴史博物館に移管した上で県民にできるだけオープンにするという方向がいいのではないかということで、ことしの2月補正で予算をいただいてやるというふうな運びになっておったわけであります。
 しかしながら、いろいろな御批判がありまして、あるいは請願も出て採択されということで、その動きは停止をしたわけであります。今、相沢委員から反省をというふうなお話ありましたが、これは再三御答弁しておりますけれども、平成11年、それから平成13年に同様に図書館から歴史博物館に一部資料を移管したという経緯がありましたものですから、そういった流れの中で今回もいわば事務的なレベルでの処理でいいんだろうというふうに私は思っておったわけでありますが、しかしながら、後でいろいろ指摘された問題点を振り返ってみますと、平成11年、13年の移管とは重要性が違うということだと認識を新たにしてまいりまして、今回の移管の重要性についての認識が私としては不十分だったなという反省はございます。
 したがいまして、一たんリセットして改めてさまざまな角度から論点整理をして、その貴重資料を将来的にどう保管するのがいいのかということを時間をかけて検討していきたいというふうに思っているところでございます。
◆(相沢光哉委員) 
 今お話のあった平成11年ないし13年に東北歴史博物館に一部の資料を移管したのは、ちょうど東北歴史博物館が新しくオープンをするということから、当時の博物館協議会、そして図書館の協議会がともに一つのテーブルで協議をした中で、古文書、要するに手紙類です。これを博物館で展示することに同意をしたという経過があるわけです。ですから、今回のように11万点もの文化財をごそっと博物館に移動してしまうなどということは、しかも、それを図書館の協議会の正式な協議事項にもかけずに行おうとした。また、博物館の協議会での議事録を拝見しても、これは皆一様にそういうことについての驚きの声、懸念の声が記録されております。
 だから、教育長がそういう平成11年、13年のことがあるからその流れの中で今回このような判断をしたというのは、今反省の言葉がありましたらそれは是といたしますけれども、現実に先ほど言ったように今の図書館行政の中では何ら状況としては変わっていないわけです。
 だから、こういうことについて職員の資質あるいは態度あるいは考え方、これは原則として我々が外部から言わなくても本来とやかくおのずからわかるところはわかるわけで、ですから、それが事実であるとすればそれなりの措置をするというのが組織としてのありようです。ところが、全然そういうことについて行われていないということが私は大変遺憾に思います。
 それから、今お話があった貴重な資料の保管上の目的で24時間空調の施設に移した方がいいという理屈づけなんだけれども、これも、これは常識的に考えればすぐおかしいとわかるわけです。なぜかというと、例えば古い書物があるとします。300年前につくられた本が今日まで残っている、そういう貴重な図書があるとした場合に、今までの300年間で24時間空調をした時間なんていうのはあるはずないでしょう。それでもちゃんと残るものは残っているんです。ですから、特に明治以前の書物であればほとんどが和紙に書かれたり、あるいは印刷されたりしているものであるから、和紙の強靱さというのは大変なものですから、だから劣化をしているということを一つ考えたって、昔から使い込んでいれば当然劣化するわけですから、それが温度とか湿度で劣化をし始めたなどと言うこと自体がもう理屈に合わない、理屈をこしらえているということが、これはだれだってわかります。
 ですから、国立図書館あるいはそのほかの権威のある方々が宮城県図書館の保管の現状についてだれ一人として問題があるということを懸念している人はいません。すべての方が全く宮城県図書館の管理のあり方は遜色がないというふうに言っています。ある方は図書を図書館に保存し利用に供するのは理の当然で、現在何ら不備のない状況下に博物館に移管する必要は全くないものと考えますと、恐らく全国研究者の失笑を買うのではないかと愚考されますというふうな言葉もあります。
 そのほかいっぱいありますけれども、こういうふうなことで教育委員会の正式な議題にもかけずに進めようとしてしまったこと、これこそまず猛反省をして、今後こういうことは一切行わないようにするという、新たな決意を教育委員会として示すことこそ今一番求められていることと思いますが、いかがですか。
◎(教育長) 
 先ほど申し上げたところでありますが、今回の移管の問題というのはかつて行われた移管とは重要度が違うと、極めて重要な問題だというふうに改めて認識をしているところでございますので、十分に今相沢委員から御指摘のあったようなことも含めてさまざまな御意見を総合的に踏まえて論点整理して、今後の方向性を出したいと思っております。当然その際は教育委員会で十分議論して後々問題が起きないようにしっかりと方向性を固めていきたいというふうに思っております。
◆(相沢光哉委員) 
 教育長、宮城県図書館の入り口に、正面とわきと両方ありますけれども、あそこに掲げられている標語というのを御存じですか。
◎(教育長) 
 承知しておりません。
◆(相沢光哉委員) 
 これは図書館の自由に関する宣言という言葉です。図書館の自由に関する宣言。これは宮城県図書館の考え方ではなくて、日本図書館協会、要するに日本全体の図書館の運営をしている責任者の方々が協議をして文言にまとめたものです。これは当然日本だけではなくて、世界各国の図書館のありように関しての基本的な思想、考え方をここに言っているんですけれども、短いものだからちょっと御紹介しますと、図書館の自由に関する宣言として、第1、図書館は資料収集の自由を有する、第2、図書館は資料提供の自由を有する、第3、図書館は利用者の秘密を守る、第4、図書館はすべての検閲に反対する、図書館の自由が侵されるとき我々は団結してあくまで自由を守る。こういうふうに書かれているんです。
 ですから、図書館にあるべき資料を保管上の問題だからといって博物館に移管してしまうなどということは、まさにこの図書館の機能、役割を考えた上でその自由を奪うことと等しいものです。いかがですか。どう思いますか。
◎(教育長) 
 今回の問題の本質的な論点は、図書館が持っている歴史ある貴重な資料をどうやってよりいい状態で後の世代に引き継いでいくかということと、その資料をどういう形でより県民がアクセスしやすい形にするか、この二つだろうと思っております。そういった観点から、どういった形で将来的にその保存、保管し、あるいは利活用を図っていくかということを幅広い観点で検討していきたいというふうに思っております。
◆(相沢光哉委員) 
 念押しをするようだけれども、そのことであればなおさら図書館は専門の職員として司書という方々がいるわけです。博物館には学芸員という専門員がいます。しかし、学芸員は図書の由来とか、あるいは類書がどこの図書館にあるとか、あるいはそれはどういう全体としての流れの位置づけで、どういうポイントになっているかとか、そんな知識は学芸員には一切ありません。まして11万点余の文化財を指定を受けるときに、博物館の学芸員がそれをサポートした事例も一つもありません。
 要するに図書館のものは図書館に置いておいて、そして、それを有効活用していく、それこそが一番県教育委員会として配慮すべきことであって、そのことが何か支障があるんだったら図書館の施設あるいは組織の中で検討していくということがごく当たり前の発想です。それを全くほかの方に移してしまうなどと画策すること自体が土台大変な間違いだったということを−−これは先ほど例示したような大変問題があって、図書館協議会会長はその2月の時点でみずから辞職をしているわけです。ところが、県教育委員会の方のその辞職を受け付けた日付というのはそれから更に5カ月もたってからの日付にしているように、そういう問題を隠ぺいしようとまでしているというふうに考えられる状態があるわけです。
 だから、これは本当に今細かいことをこれ以上もう申し上げませんけれども、さまざまな観点から考えてもこんなことが二度と起こっては困る。ですから、絶対こういうことをまた再び考えたりしないように、論点整理云々と言って何かまだあきらめ切れずにあがいているような印象すら感じるので、ぜひそういうことは一切なく、この結果というものを重く受けとめて、将来とも図書館は図書館、博物館は博物館としての内容充実にむしろ努めることが今宮城県教育委員会教育長としての一番の責務であるという自覚をぜひ持っていただきたいと、このようにお願いいたしまして私の質問を終わります。
◆(岸田清実委員) 
 私のところにも、各委員のところにも行ったと思うんですけれども、各専門家、各方面の方から保管状況は適正である、移管する必要は全くないという趣旨の非常に多数の見解書、まとまったものが届いておりました。
 今、各方面の意見を聞きながら論点整理というお話ですけれども、一方で現状で適正に管理しているというのはたくさん読みますし、マスコミにも各方面の方がそういう意見を言われているようなものが載っていますけれども、いわゆる専門家とか、そういう方で移管すべしという意見は届いているんですか。
◎(教育長) 
 現在では基本的に事務局レベルでの論点整理でありまして、これである程度論点整理された上で必要に応じて専門家の御意見を伺っていきたいというふうに思っておりまして、いつまでに何をしようというふうなスケジュールは今のところ持っておりません。十分に時間をかけてまず事務局として論点整理をしたいというふうに思っております。
◆(岸田清実委員) 
 これだけ話題になっているわけですからいろいろな声が県教育委員会に届くのがむしろ当然であって、そういう意味では多分専門に携わっている方で移管すべしという意見を持っている方は恐らくいないというふうに考えざるを得ないわけです。だから、そんな中で時間をかけて論点整理というお話ですけれども、この問題についてやはり一定のところでけりをつけて、保管状況に部分的に修正すべき点があるならば相沢委員おっしゃったように現在の図書館に手を加えていくとか、聞くところによれば多額の費用をかけなくても十分そういう対応がとれるという話も伝え聞きますし、そういう検討にむしろ入ることこそが県民の宝物である古書、古典籍を適正に管理していくことにつながっていくのではないかというふうに思いますけれども、どうですか。
◎(教育長) 
 ただいまの御意見も参考にして今後検討してまいりたいと思います。