図書館資料移管に関する宮城県議会における一般質問

○(畠山和純君) 59番相沢光哉君。

○59番(相沢光哉君) 
 最後に、大綱4点目、図書館資料移管問題の検証と今後の対応について伺います。

 6月議会最終日の請願採択によって、県図書館所蔵の11万1千点余りの文化財資料が東北歴史博物館へ移管されることは停止されました。このことは、図書館と博物館がそれぞれ持つ役割と機能をはっきり認識する上で極めて当然の結果であり、県教育委員会が行おうとした暴挙を未然に防ぐことができたことは、県文化行政のあるべき姿として高い評価を受ける判断と選択であったと確信いたします。同時に、所管の文教警察委員会での各議員諸兄の真摯な質疑の内容を読むにつけ、また、本会議で全会一致の請願採択に至った満場の議員諸兄の見識を改めて振り返るにつけ、私ども県議会が、その役割をしっかり果たし得たことに万感の思いと深い感慨を胸にするものであります。
 しかし、一件落着とするにはなお不透明なことが少なからずあります。およそ2年間にわたる本件の経緯の中で、だれが、いつ、なぜ、どのようにして事を進めようとしたのか。それは行政手続として適切であったのかどうか。特に、県教委の機構、役割、権限を見る上で、つかさつかさの人々の行動判断に問題はなかったのか。もしあったとすれば、その責任はどう果たすのか。改善すべき点があるとすればどう対応していくのかを、臭いものにふたをするのではなく、検証できるところは検証して、県教委の組織機構のあり方を考えるべきと私は思います。
 そこで、以下、数点伺ってまいります。
第1点、請願者に対する回答の中で教育長は、今後の図書館所蔵資料に関する利活用等について論点整理を行い、中長期的視点に立った検討をしていくとし、事実、有識者による検討会議を設置する動きがあったが、移管停止を決定した後で、改めて検討会議を開く趣旨は何か。また、そのための補正予算を9月議会に提案する予定を結局取りやめた理由は何か。また、移された資料等は図書館に戻したのか。
第2点、移管を必要とした理由に、図書館の温度・湿度管理が24時間空調でないために資料が劣化していることを図書館長は再三にわたって強調しているが、文化庁を初め、県図書館の学術調査を行った外部研究者は異口同音に、保存管理は全く問題なく、劣化の危険性はないことを証言している。劣化をしたとする資料は具体的に何で、どのぐらいの数量なのか。また、全国の公共図書館で24時間空調をしているところはどこで、何カ所あるのか。
第3点、教育長は、平成22年2月の東北歴史博物館協議会の席上、移管が県教育委員会において決定したとの副館長の発言を黙認している。それでは、いつの教育委員会定例会での議事ないし報告なのか。
第4点、本年8月の県教育委員会定例会の議事録を見ると、教育長は委員の質問に答え、今回問題となっている資料の移管については、教育委員会の場で決定した経緯はないと明言している。驚くべき発言であるが、そうであるとすれば、図書館長が図書館協議会長の抗議を受けたとき、「教育委員会に聞け、既に決定したことだ」と強い口調で語ったとされる内容は、全く正当性を持たないことになるがどうか。
第5点、県教育委員規則の教育長に対する事務の委任等に関する規則の中で、教育委員会が教育長に委任しない事務権限として、重要な教育財産の取得について申し出ること及び文化財保護条例に基づく文化財の指定及びその解除、保持者、保存団体又は保存団体の認定及び解除を規定している。この規則の解釈からしても、今回の移管は十分教育委員会で協議すべき案件ではないか。教育長及び教育委員長の所見を伺う。
第6点、同様に、前問について監査委員の見解を伺う。また監査委員は、本年7月に県図書館を監査したと思うので、本件に関わる質疑等差し支えない範囲で聞かせていただきたい。更に、160億円かけた施設が、図書館資料の劣化をはや招くような状況になったのかどうか。受監側の対応も含め伺いたい。
第7点、教育長は、移管の根拠について、平成21年、23年に図書館から博物館に移管があったことを前例として上げ、その流れの中で今回の移管を進めたと再三述べている。この両年は、新博物館完成に伴って、図書館がかねて購入していた古文書(こもんじょ)を協議の上、博物館に移管したものであり、図書は一冊も含まれていない。教育長が古文書と図書の違いを意識しているかどうかは不明だが、「その流れの中で」11万点余りの貴重な図書の移管を教育委員会に諮らずに決めたと考えざるを得ないがどうか。
第8点、教育長は、平成22年4月から博物館長を兼務している。本来、教育行政の責任者として、文化財保護課所管の博物館、生涯学習課所管の図書館、美術館の課題を大所高所から指導監督すべきであり、このような事態になればなるほど、教育長は博物館に肩入れしていると見られてしまう。歴博の資料充実のために、図書館の文化財を多額の予算を要さずに移管するという妙案に自らはまってしまったのではないだろうか。一体だれがこのプランをつくったのかについて見解を問う。

○議長(畠山和純君) 教育委員会委員長。

教育委員会委員長 
 大網4点目、図書館資料移管問題の検証と 今後の対応についての御質問のうち、 今回の移管は十分教育委員会の協議すべき案件と思うがどうかとのお尋ねに お答えいたします。
 事務委任規則上の関係につきましては、教育長から後に詳細に答弁いたしますが、 今回の案件は、教育財産の管理上の問題として、事務委任規則に基づいて、 教育委員長に委任していると考えております。 したがって、今回の移管については、 教育委員会の場で決定したものではございませんでした。
 私からは、以上でございます。

○議長(畠山和純君) 教育委員会委員長。再答弁ですか。どうぞ。

教育委員会委員長 
 ちょっと間違ってしまいまして、 失礼をいたしました。
 事務委任規則に基づいて、教育長に委任しているものと 申し上げるべきところを間違ってしまいました。大変失礼いたしました。 もう一回読み上げましょうか、よろしゅうございますか。
 今回の案件については、教育財産の管理の問題として、事務委任規則に基づいて、 教育長に委任しているものと考えております。
 以上でございます。失礼致しました。

○議長(畠山和純君) 教育長。

○教育長 
 大網4点目、図書館資料移管問題の検証と 今後の対応についての御質問のうち、 移管停止後に検討会議を開催する趣旨等についてのお尋ねにお答えいたします。
 検討会につきましては、今回の県議会での請願採択の結果を踏まえ、 図書館が所蔵する文化財資料等の貴重資料を将来的にどのように取り扱うのが 適切なのか、有識者の意見を踏まえ、総合的に検討していこうとするものであり、 現在、論点整理を進めている段階であります。 また、ことし2月に行った古銭や絵画、工芸品等の移管につきましては、 東北歴史博物館職員が行っており、予算は執行しておりません。
 なお、その際移管した古銭などにつきましては、博物館と図書館との協議も踏まえ、 その取扱いを検討したいと考えております。
 次に、劣化したとする資料の名称及び、数量、 ならびに24時間空調している全国の公共図書館についての ご質問にお答えいたします。
 貴重資料の現状につきましては、例えば、平成14年度に行った調査により、 伊達文庫のうち、古地図359中182点について、折り目が痛んでいるなど 状態が悪いことを把握しております。
 また、24時間空調につきましては、全国の公共図書館すべてを 調査しているわけではありませんが、 東北では青森県岩手県秋田県福島県の4県の県立図書館において、 24時間温湿度管理を行っております。
 次に、図書館所蔵資料の移管が決定したとされる教育委員会の開催時期についての 御質問にお答えいたします。
 図書館所蔵資料の移管につきましては、教育委員会の会議で 決定されたものではありません。本年2月の東北歴史博物館協議会における、 教育委員会において決定したとの副館長の発言は、 教育委員会の会議において決定したということではなく、 教育委員会が組織として決定したという意味であると理解しております。
 次に、移管の決定に関する私と図書館長の発言についての 御質問にお答えいたします。
 ただいまお答えいたしましたとおり、今回の図書館所蔵資料の東北歴史博物館への移管につきましては、教育委員会の場で決定したものではありません。 図書館長が述べた教育委員会という言葉は、教育委員会が組織として 決定したものという趣旨であろうと思います。
 次に、今回の移管は、十分教育委員会で協議すべき案件ではないかとの 御質問にお答えいたします。
 教育委員会の権限に属する事務につきましては、 教育長に対する事務の委任等に関する規則第1条第1項各号に規定されております。 その中には、御質問にありましたように、重要な教育財産の取得について 申し出ること、及び文化財保護条例に基づく文化財の指定及びその解除、 保持者、保持団体又は保存団体の認定及びその解除、 文化的景観の選定及びその解除ならびに保存技術の選定及びその解除を 行うことが規定されております。
 今回は、県が既に所有している教育財源である資料を県図書館から 東北歴史博物館に部分的に移管しようということで、 重要な教育財産の取得を知事に申し出るものではなく、 また、文化財の指定等に該当するものでもありません。 したがいまして、今回の案件は、教育長に委任されている事務と解されますことから、 教育委員会における議案として審議する事項には当たらないものと判断しております。
 次に、今回の移管を決定した経緯についての御質問にお答えいたします。
 平成12年及び平成13年の移管の際には、図書館及び東北歴史博物館の職員間で協議しながら移管を行ってきたものであります。 今回の移管につきましても、これまでの流れを踏まえながら、 関係職員での検討を行った上で決定したものであります。
 次に移管のプランはだれがつくったのかとの御質問にお答えいたします。
 今回の移管につきましては、平成21年12月に、教育庁内部に関係課及び 両館の関係者で組織する検討会を設置し、具体的な検討を始めたものであります。 その結果、平成22年9月に図書館所蔵の文化財資料等約11万点を東北歴史博物館に 移管すべきという結論に達したものであります。
 なお、私は平成22年度から東北歴史博物館館長を兼務しておりますが、 あくまで教育委員全体の施策を考える立場にあり、 博物館の都合を優先するなどという考えは全くないことを申し上げておきます。
私からは以上でございます。

○議長(畠山和純君) 監査委員。

○監査委員 
 大網4点目、図書館資料移管問題の検証と 今後の対応についての御質問のうち、監査委員の所見についてのお尋ねに お答えいたします。
 まず、事務の委任等に関する規則の解釈についての御質問がございました。
 このたびの事案は、ご指摘のありました規則に直接は該当しないと考えておりますが、 図書館所蔵資料の移管に関しては教育委員会で協議すべきかどうかについては、 教育委員会において、規則の趣旨等を踏まえて適切に解釈運用すべきものと 考えております。 図書館については、去る7月28日に定例の委員監査を行いましたが、その際に、 館長から、移管の目的、調査研究体制、保存環境上の問題点等について 説明を受けました。 館長としては、特に保存環境上の問題から、図書館よりも東北歴史博物館の方が 保管場所としてふさわしいとの見解でありました。 7月の委員監査は、図書館所蔵資料の劣化の状況等について 実態調査を行ったものではありませんが、館長からは、東北歴史博物館では、 温度・湿度を24時間管理しているのに対して、図書館では、 開館時間のみ空調を入れているため、 温度・湿度の変動が激しく資料の保存招待が悪化しているとの説明がありました。 いずれにしましても、この問題については、専門家の意見をしっかりと聞き、 関係者とも十分に相談して理解をいただいた上で適切に対応していただきたいと 考えております。
 以上でございます。

○議長(畠山和純君) 59番相沢光哉君。

○59番(相沢光哉君) 
 教育長に伺います。
 答弁漏れがあったのではないかと思いますが、有識者による検討会議の補正予算を9月議会で討上する予定だったのを取りやめた理由があるんではないかと、 こう思います。その点、1つお願いします。
 それから182点の書籍の折り目に劣化があるという答弁でありますが、 これは、温度・湿度による影響ではなくて、要するに書籍を開いたり閉じたり 長年使い込んできた、それだけの理由ではないですか。 その点を2つ、まずお答えください。

○議長(畠山和純君) 教育長。

○教育長 
 予算の件につきましては、今後、必要があれば予算措置を 検討したいという風に思っております。
 それから、資料の劣化の件につきましては、先ほど申し上げたのは一例で ございまして、いずれにいたしましても、先ほどお答えしたように、論点整理、 今行っている段階でございますので、その中で資料の劣化の状況などよりも詳細に見ていく必要が あるというふうに思っております。

○議長(畠山和純君) 59番相沢光哉君。

○59番(相沢光哉君) 
 教育委員会が組織としてこの移管を競技・検討して決定したと、 こういう答弁であります。 しかし、監査委員からの発言では、これは教育委員会として 取り上げるべきであったろうという、またご指摘もありました。 そのことに関して、改めて、教育委員長、そして教育長のお考えを お伺いをいたしたいと思います。

○議長(畠山和純君) 教育委員会委員長。

教育委員会委員長 
 教育委員会といたしましては、これまで2回、 既にこうしたことに対しての県民側からの問題意識が提出された後で、 議題として取り上げております。 そして、これを県民目線でどういうふうに考えるかということについては 二度ほど議論しているわけではございますが、それは、請願が出た後のことで ございます。 その後のことにつきまして、移管している内容について、いい形で先に進むことが 望ましいと考えておりますが、問題が生ずれば、委員会の中でも 議論をしていかなければと考えております。

○議長(畠山和純君) 教育長

○教育長 
 この案件については、規定上は教育長に 委任されている事務というふうに理解しておりますが、先ほど申し上げましたように、 今後、図書館所蔵の貴重資料をどう扱うのが適切なのかということについて、 今後さまざまなお立場の人から、あるいは専門家からご意見をいただいた上で、 改めて方針として固めたいというふうに思っておりまして、その段階では、 これは事務委任規則上の重要又は異例に属する事務という事で 委員会の議に付すると、あるいは考え方を報告するということは 必要だろうというふうに思っております。

○議長(畠山和純君) 59番相沢光哉君。

○59番(相沢光哉君) 
 私は、十分反省と責任の所在を はっきりしていただきたいと思います。
 最後に、知事にこの移管問題について伺います。 知事は、この移管問題をどう判断しているのか。 また、県の主要な文化施設の長の人事のあり方について、 最高責任者としてどう考えているのか、お伺いします。
 また、このことは、教育委員会そのものの問題でもあろうと思います。 大阪維新の会代表の橋下大阪府知事は、教育委員会と首長の関係を見直して、 教育委員会への政治関与を明記した条例案大阪府大阪市堺市等で出しております。 このことについて知事の所見をお伺いいたします。

○議長(畠山和純君) 知事村井嘉浩君。

○知事(村井嘉浩君) 
 この移管問題につきましては、教育委員会として しっかりと受け止めていただかなければならない問題だと考えております。
 今回、議会で請願が出まして、その請願が採択をされたということにつきましては、 特に教育委員会において重く受けとめ、適切に判断をすべきであると、 このように考えております。
 それから、二つ目の文化施設の長の人事のあり方についてであります。
 図書館、美術館、東北歴史博物館、県民の文化・教育の重要な拠点でございまして、 そこの特に責任者がどういう方になるかによりまして、 その運営に大きな差異が出てくるというふうに思っております。 今回、どこに問題があったのかということもよく検証しながら、 人事につきましても、やはり適材適所ということをしっかりと 考えていかなければならないと考えております。
 最後に、三つ目の大阪府知事大阪維新の会の教育への政治関与についてでございます。 これについては、今、大阪で府議会に諮られて、 いろいろな議論がなされておりますので、 他県の知事として余り込み入ったコメントを出すべきではないと考えておりますが、 しかし、教育行政の今後のあり方に大きな影響を与える条例案でございますので、 非常に関心を持って見ております。
 私個人といたしましては、教育の政治的なものからの独立というものは 非常に重要なものであるというふうに考えておりますけれども、 今回の大阪維新の会の議論が世の中に色んな問いかけをしておりますので、 国民の皆様の考え方というものもよく見きわめてまいりたいと、 このように思っております。