宮城県議会への請願330の3

宮城県議会議長 ○ ○ ○ ○ 殿

宮城県図書館資料の東北歴史博物館への移管の即時停止並びに移管決定に到る手続きの公開に関する請願書

          紹介議員(原本は自筆署名)
      自由民主党・県民会議 ○○○○
      自由民主党・県民会議 ○○○○
      21世紀クラブ    ○○○○
      日本共産党      ○○○○
      社民党県議団     ○○○○
        
1 請願の要旨
(1) 宮城県図書館の根幹に関わる図書館所蔵資料11万点の東北歴史博物館への移管の即時停止を求めます
(2) 移管を決定するに至った手続きを公開するとともに、県民の意見を聞く機会を設けるよう再考を求めます

2 請願の理由
 県民の意見や宮城県図書館協議会の意見すら聞くことなく、何の前触れもなく県民の共通の財産である宮城県図書館所蔵資料11万点を、東北歴史博物館へ6月までに移管するということを2月25日付の新聞報道で知りました。これが事実であれば、宮城県民をないがしろにしたばかりでなく、日本の学術文化の振興に重大な支障を及ぼすことになることから、即時、移管の中止を再議決してください。移管決定に至る手続きを公開するとともに、遅ればせながら県民の意見を聞く機会を設け、宮城県図書館資料収集の歴史的経緯と図書館と博物館の相違を明らかにして再考を求めるものです。

(1)宮城県図書館所蔵図書の経緯
宮城県図書館の古典籍の多くは、県内の蔵書家として知られる人びとが寄贈を重ねて出来たコレクションです。図書館で所蔵する先人の著作を読み、自身の著作にまとめたものを更に加えて蔵書と共に寄贈する、その連綿とした繋がりが現在まで蓄積されたものといえます。そのなかでも日本における公共図書館の始まりといわれるものが、今回移管の対象の一つでもある「青柳文庫」です。「青柳文庫」は今から180年前の天保2年(1831)仙台領内に建てられました。公共図書館の定義は、「資料を収集し、それを誰にでも無料で貸出や閲覧に供し、公費で運営され、司書等の専門的職員が中心となって管理運営されている施設」です。仙台藩青柳文蔵が蔵書の寄付を申し出て、それを引き受けて「青柳文庫」を藩校である仙台医学校の敷地内に建設し、目付二人が貸出帳を付けて管理しながら誰にでも無料で貸出したことによって、仙台が日本図書館史の中で公共図書館の発祥の地と認められ今日に至っております。これは県民の誇りでもあります。
 宮城書籍館(現宮城県図書館)は明治14年(1881)「養賢堂文庫」と「青柳文庫」を蔵書の基礎として創設されました。平成23年(2011)は、宮城県図書館創立130周年、青柳文蔵生誕250年にもあたっています。この記念すべき年に、宮城書籍館の基盤となった「青柳文庫」、「養賢堂文庫」を含む全ての古典籍を博物館に移管するということは、宮城県民にとっての衝撃的出来事というばかりでなく、日本の図書館界にとっても重大な危機といえます。
 宮城県図書館の古典籍は全て司書の手によって整理され蔵書目録が刊行され全国の図書館に配布されています。岩波書店の『国書総目録』や、その他の研究書の引用書目などにも「宮城県図書館所蔵」と記述されています。国文学研究資料館の「日本古典籍総合目録」を初めとするWEB版のデータベースも同様です。この蔵書目録をもとに、県内外を問わず、大学や民間の研究者が古典籍を利用するため宮城県図書館を訪れます。
古典籍を文化庁の指導を受けながら保存・修復し、デジタル化技術を駆使して学校教材にも活用できるよう複製し、更にデジタルアーカイブとして公開する「叡智の杜」事業も県内各学校やインターネット上で好評を博しています。
 「青柳文庫」を扱った「公共図書館、仙台から始まった」という全面記事(『夕刊読売新聞』2009年3月17日大阪読売新聞社)の中に、「先人の知の集積こそが図書館。内外の歴史や文化、精神を次世代へと伝える叡智の杜」という言葉が掲載されていますが、これこそ、紀元前7世紀から現在に至るまで、世界中で人類の学びを支える施設として図書館が支持され、存在する理由を端的に表現しています。

(2)図書館と美術館・博物館の違い 
 「図書館法」を見ても、図書館資料の利用主体は一般公衆であり、図書館の専門的職員である司書の基本的な仕事は、一般公衆が調査研究や教養、レクリエーションのため資料活用することを援助し奉仕することです。
 一方博物館資料の資料活用や調査研究の主体は、博物館の専門的職員である学芸員であり、一般公衆はその研究結果を展示物として観覧するものです。
また、博物館の収集対象は「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学」と、分野が「博物館法」で限定されていますが、図書館の収集対象は「図書、記録、その他必要な資料」とあって、政治、経済、統計、工学、児童図書をはじめ、範囲がはるかに広く限定がありません。まさに知識の全分野です。
 資料の年代も中世から近世、近代、現代と時代を超えて継続して蓄積していくべきものであり、国立国会図書館都立中央図書館都道府県立図書館、全国の大学図書館など、全て膨大な古典籍を所蔵し、更に最近の研究論文と原資料をともに利用できるようサービス体制を整えています。古典籍を解読するために必要な関連文献や研究著作を複写するサービスが著作権法で許されているのも司書のいる公共図書館だけです。
 博物館は博物資料・歴史史料を収集し、調査研究のうえ、主として展示という手段で一般公衆に公開するのに対し、図書館は全分野の図書資料を収集し、主として閲覧・貸出・相談・複写サービスという手段で一般公衆の活用を支援する施設といえます。過去に、宮城県図書館協議会の提言を受け、刀剣、武具、高札など保存に適さない博物資料、古文書を東北歴史博物館へ移管した例については承知しています。

(3)移管理由に対する疑問  −燻蒸設備と展示スペースについて−
新聞報道によれば、「図書館には文化財保存に適した薫蒸設備がなく、十分な展示スペースもない」とありますが、資料保存の専門家は、過去数十年にわたり安全に保存されてきた資料について薫蒸の必要はまったくないとしています。
 展示スペースについては、宮城県図書館の新館建設の際、生涯学習課を含めた建設委員会で十分な検討をし、貴重資料の公開を目的とした全国でも最大規模の優れた展示ホールを備え、貴重資料を活用した企画展を度々開催し常設展とともに好評を得ています。

(4)以上の観点から、立体的な美術工芸品、民具や出土品・標本・模型・玩具や器具などの展示・陳列品等の博物資料、古文書等を除く、図書及び地図資料は、これまでどおり宮城県図書館で収蔵し、一般公衆の利用に供することによって学校教育を支援し、生涯にわたる学習や、学術文化の向上に資するよう努めるべきと考えます。

以上の通り請願いたします。

(請願者7名)
住所  
氏名    
電話番号  

 (以下省略)